ブルバキとランダウ

世界水準の数学と物理学の説明を試みます。ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。

数学原論(その5)

 現在2019年1月24日5時23分である。

 相対性理論のブログで、宣言したように、この連載を、もっと賑やかなものにすることにした。

 また、当分は、フランス語との対訳は行わないこととする。

「太郎さん、今日、馬鹿に早いじゃない。眠れなかったんじゃないの?」

 実は、そうなんだ。

 体がくすぐられているような状態になり、そのための薬を2回も飲んで、睡眠薬を飲んでも寝られなかった。

 こういうときは、諦めて、数学や物理学をやるに限るんだ。

若菜「今回から、この『ブルバキランダウ』のゼミにも参加して良いことになりましたが、大丈夫でしょうか?」

 私の経験から言って、科学に興味のある子供というのは、子供向けの本で、『大きくなったら、こういうことも、学びます』という文に会うたびに、『私、今だって分かるかも知れないのに』と、残念に思っているものだ。

若菜「それは、お父さんでしょう」

 まあ、そうだけど、特待生の麻友さんと、若菜と、結弦は、いつ、何を質問しても良い。

『それは、流石に今、全部は説明できない』

と、答えることもあるだろうが、とにかく、いつ質問しても良い。

結弦「小学校6年生に、大学レヴェルの数学や物理学を、マジに数式使って説明するなんて、気違い沙汰だけど、楽しみではあるなあ」

若菜「今日は、ブルバキだけど、どうやって進めるんですか?」

 フランス語の原書と突き合わせることはしないから、速く進むと思う。

 最初の、『読者への注意』から始めようと思う。


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   読者への注意

 1.この原論は数学をその第一歩から取扱い,完全な証明を付ける.したがって,これを読むのに,原則的には数学的予備知識を全然必要としない。ただ,多少の数学的推論の習慣と,多少の抽象能力とが必要なだけである。

 そうは言うものの,この原論は,少なくとも大学一,二年次程度の数学知識を持った読者を念頭に置いて書かれている.


 2.叙述の仕方は公理的,抽象的であり,原則として一般から特殊へと進む.この方式を選んだのは,現代数学全体に確固たる基礎を与えようというこの原論の主目的による.この目的にためには,多くの概念や一般原理を一挙に獲得することがどうしても必要である.さらに,証明を付ける必要上,内容は原則として厳密に定められた論理的順序に従って配列される.したがって,この原論の中には,すでに広い知識を持合わせている読者にしかその効用がわからないような事柄も含まれている.そうでない読者は,納得できる機会が来るまで判断を差控えて辛抱強く待たなければならない.


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結弦「ちょっと、ストップ。『叙述の仕方は公理的,抽象的であり,原則として一般から特殊へと進む』って、どういうこと?」

 小学生には、『抽象的』という言葉自体が難しいからね。例えば、長方形の面積を測ることを、考えよう。長方形の一辺がa{\mathrm{cm}}で、もう一辺がb{\mathrm{cm}}なら、その長方形は、ab{\mathrm{cm^2}}だよね。

結弦「本当は、aやbという文字は使えないんだけど、まあ、許すことにして、それで、どうなるの?」

 これは、一般的な議論なんだ。それに対し、長方形の一辺が、4{\mathrm{cm}}で、もう一辺が、12{\mathrm{cm}}なら、その長方形の面積は、48{\mathrm{cm^2}}と、求まるよね。具体的な場合の答えが出ている。これを、特殊な場合というんだ。

結弦「なんか分からないけど、最初に一般の公式作っちゃって、後はそれに、数字入れて、答えを出すみたいなんだな」

 そうなんだよ!

 ブルバキは、すべての数学をそうやって、公式から導けるようにしようとしたんだ。

「でも、味気なさそうね」

 そのことについても、ブルバキは話し合った。歴史的に生まれてきた数学のエピソードを全部葬って良いのかと。

 そして、出した結論が、歴史は歴史で、それぞれの単元ごとに付録として付けようというものだった。

 ところが、『数学原論』が、絶版になったのに、『ブルバキ数学史』だけが生き残って、今でも版を重ねている。

 この世界では、何が役に立つのか、わからないものだ。

若菜「『そうでない読者は,納得できる機会が来るまで判断を差控えて辛抱強く待たなければならない』って、どれくらい待たなければならないんでしょう?」

 あっ、これね、ひどいんだ。第1章§1に、例として、リーマン予想が、挙げられているんだ。でも、これ、2019年1月現在未解決なんだよ。

若菜「えっ、それは、ひどいのでは?」

 数学好きの心をくすぐろうとする仕掛けが、至るところにあるんだ。

「続けて」


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 3.この種の不都合をいくらかでも少なくするために,この原論ではまだ扱われていない事柄でも,読者がすでに知っていると思われるものは,例としてかなり頻繁に挿入しておいた.こういう例は,二つの星印{{}^*\ \ \ {}_*}で挾んである.たいていの読者にとっては本文の理解の助けになると思われるから,初めて読むときも飛ばさずに読む方がよい.もちろん,論理的にはこれらの例は読まなくても別に支障は生じない.


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 細かいことを言うと、

(p.1,l.6)

常用漢字    挟んである

常用漢字非該当 挾んである

となっているから、本来なら、書き換えた方が、読みやすくなる。

「太郎さん、本当に丁寧に読んでるのね」

 2005年3月14日に読み始めて、2005年4月4日に挫折している。しかし、その後も何度も挑戦しているから、結構間違いに気付くんだ。

「続けて」


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 4.原論はいくつかの部門から成る.基礎的な六つの部門(集合論,代数,位相,実一変数関数,位相線形空間積分)では,本文の記述は,上述の順序で先行する部門の結果および同じ部門のその箇所より前にある結果だけに基づいて進められる.他の各部門は,その部門の内部ではこの原則に従うが,部門同士のあいだには前後関係はない.ただし,基礎六部門はつねに既知とみなす.そして,部門の始めまたは章の始めに,他の部門との論理的関係を精しく明示する.したがって循環論法の心配はない.


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 2010年9月2日に、読んだとき、上の、

論理的関係を精しく明示する

の、『精しく』を辞書を引いて、『くわしく』だと、ふりがなを振っている。

若菜「お父さん。そのノートと本、宝物なんじゃないですか」

 うん。この『数学原論』と、研究ノート。未完成だけど宝物なんだ。

 他に、『現代論理学』と、そのノート。『数学基礎概説』と、そのノートは、完成している。

 完成していないのは、『解析入門ⅠⅡ』と、そのノート。『数Ⅲ方式ガロアの理論』と、そのノート。『体とガロア理論』と、そのノート。『群と位相』と、そのノート。『ルベーグ積分入門』と、そのノート。『集合論問題ゼミ』と、そのノート。『超準的手法にもとづく確率解析入門』と、そのノート。『グライナー量子力学概論』とそのノート。


『趣味で量子力学』と、そのノート。←これは、その後、完成した。

 それ以外は、早々に撤退しているから、それほど大切なノートではない。

結弦「物理学より数学の方が、圧倒的に多いな」

 そうだね。物理学が正妻と言いながらも、恋人の数学の方が、やっぱり好きなんだね。

 私は、物理学を数学として理解しているんだ。

「太郎さん。もう一度寝る努力してみたら? もう大分時間経ってるわよ」

 じゃあ、これで、解散するか。



「ちょっと、太郎さん。正直に答えて欲しいんだけど、こんなにブログ書いてて、『ホーキング&エリス』は、大丈夫なの?」

 本当のところ言うと、出来るかどうか、確信持てない。

 ピンチヒッターに立った人が2人いるけど、その人達がどんな仕事をしてくれているのか、何も音沙汰ないから、私としても、安心できない。

 6月までに発売と言いながら、まだ半分しか訳せてない。

 正直言ってあんなに難しい本なのだから、もっと準備をしてから、訳に取りかかるべきだった。

 まあ、今さら誰かを責めてもしょうがないから、私に出来ることを、少しでもしようと思ってる。

「太郎さん。本音を聞かせてよ。どうすれば、太郎さんが、本気になれるの?」

 うーん。言いにくいんだけどね、私、数学が得意だから、数学の力で物理学の問題を解いちゃうの。

 そのせいでね、私には、その問題でどういう物理現象が起きていたかが、きちんと把握できていない場合があるの。

 ホーキングの本は数学的な本だから、何とか乗り切れるだろうと思ったんだけど、もっと私に物理学の問題をぶつけてくれる人がいると、助かるんだけどな。

 私の戦友でもいいし、ピンチヒッターの人でも良いから、私の脳の物理学の部分を刺激してくれる人が現れるといいんだけどね。

「確かに太郎さん、数学好きだものね。でも、なんとか、完成させてよ♡」

 わかった。おやすみ。

「おやすみ」

 現在2019年1月24日9時17分である。おしまい。