ブルバキとランダウ

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数学原論(その4)

 現在2019年1月19日0時10分である。

 『数学原論』を、全部訳しながら読むというのは、良い試みなのだが、今のままでは、本文に入る前に、沈没しそうである。

 『数学原論』を読んでみようかという意欲のある人に取って、私に期待していることの一つは、多くの人が勘違いしやすいところで、私も勘違いしたところを、私がどう乗り越えたかという、打ち明け話であろう。

 実際、私は、これまで進んだところ(日本語訳36ページまでだけ)でも、数多くの勘違いをして、それをノートに全部書いてある。

 このノートを、ちょっと恥ずかしいが、公開することは、ブルバキの敷居を下げるために、有効であろうと思う。

 幸い、今訳している、『読者への注意』が3ページ続いた後、訳者が、『第1章を読むための注意』というものを、書いている。

 この『第1章を読むための注意』は、フランス語原著にはなく、日本語版訳者が、ブルバキが難し過ぎると思って付けたものである。

 そこで、フランス語の勉強を兼ねて、『読者への注意』を少しずつ訳しつつ、『第1章を読むための注意』を、解説していこうと思う。

 目標は、ブルバキ全巻を読み通すことなのだから、少しでも楽しくやっていこうと思う。


 それでは、先に、『第1章を読むための注意』から、始めよう。


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     第1章を読むための注意
                       訳者

 本書の第1章はいわゆる《記号論理学》で,通常《等号をもった第一階の述語論理》とよばれているものの解説である.それは,集合論に限らず,あらゆる数学的理論に共通に用いられる論理,言いかえれば,あらゆる数学的理論を形式的に記述するに際しての共通の枠組みを与えるものである.個々の数学的理論を形式的に記述する場合には,その理論に特有の公理や,その理論に特有の推論の規則を追加すればよろしい.たとえば,本書においては,第2章以後に集合論固有の公理が追加される.

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 この文章は、以下にも続いていくが、とりあえずここまで。

 等号をもった第一階の述語論理という言葉を初めて聞く人は、第1章が辛いだろうが、予習するために私が読んだ本で、お勧めできるのは、以下の本である。

安井邦夫『現代論理学』(世界思想社

『あらゆる数学的理論を形式的に記述する』というときの、『形式的』というのは、通常われわれは、計算するときでも証明するときでも、数字や記号の意味を考えながら、計算したり証明したりしている。しかし、人間の感覚は、常に正しく働くとは限らないので、こういうものが出てきたら、無条件にこう、というように、意味を考えずに、形式だけで数学を築こうというやりかたがある。

 このやり方は、味気ないのだが、実は意味を考えた数学と、同じ結果が得られることが分かっている。

 ブルバキは、そのことが分かっているのだが、何とも意地悪にも、第1章の付録の問題で、あっさりとそれに触れているだけなのである。

 その意味でも、上に上げた『現代論理学』を、一読することを、お勧めする。第5章まであるうちの第2章まで読むだけで良い。


 今日は、ここまでにしておこう。私の数学の能力が上がったら、本文にも入っていこうと思う。

 現在2019年1月20日21時48分である。おしまい。